借り上げ社宅は、結局得だったのか ― 補助の大きさより、家賃そのものでした
以前、これまで住んできた4つの部屋を振り返る記事を書きました。
その中で、働き始めて最初に住んだ、病院の借り上げ社宅のことにも触れています。
家賃の半額を病院が負担してくれる、ありがたい制度でした。
ただ、その記事の中で、僕はこう書いていました。
「制度としてどれくらい得だったのかは、実はきちんと分かっていません。」
今回は、その続きです。
あらためて調べてみると、借り上げ社宅と、現金でもらう住宅手当とでは、税金や社会保険の扱いがかなり違いました。
そして振り返ってみると、僕にとって大事だったのは、補助の大きさとは少し別のところにあった気がしています。
当時の仕組み
働き始めたとき、病院に部屋を借りてもらいました。
病院専用のマンションがあったわけではなく、普通の賃貸物件を病院側が契約して、そこに僕が住むという形でした。
いわゆる借り上げ社宅です。
家賃の半額を、一定の上限まで病院が負担してくれる制度でした。
僕の部屋は家賃6万円だったので、自己負担は3万円。
給料から天引きされていました。
敷金や礼金、管理費も自分では払っていません。
賃貸契約も病院側だったので、僕自身が保証人を探したり、契約手続きをしたりする必要もありませんでした。
病院から鍵を受け取って、ただ住むだけです。
退去するときもそうでした。
温度差なのか地震なのか分かりませんが、窓にヒビが入っていて、部屋には少しカビも生えていました。
一応謝りました笑
でも、退去に関する対応は病院側でしてもらえて、僕は鍵を返しただけで終わりました。
ありがたい限りです。
同期で一番安い部屋に住んでいました
ただ、一つだけ、少し思うところがありました。
半額補助ということは、家賃が高い部屋に住むほど、病院が負担してくれる金額も大きくなります。
同期の中には、
「たくさん補助してもらわないと損だ」
と言って、もう少し高い部屋を借りている人もいました。
一方の僕は、同期の中で一番安い部屋に住んでいました。
つまり、補助してもらう金額も一番少なかったわけです。
少し損をした気分になっていました笑
もちろん、補助してもらっているだけでありがたいのですが笑
住宅手当と借り上げ社宅は、同じではありませんでした
では、この制度は実際どれくらい得だったのか。
調べてみて最初に分かったのは、
現金でもらう住宅手当と、会社が契約して貸してくれる社宅は、税金や社会保険で同じ扱いではない
ということでした。
ここは税金と社会保険で計算方法も違うので、少しややこしいです。
現金の住宅手当は、基本的には給与です
まず、給料に「住宅手当3万円」といった形で現金が上乗せされる場合です。
これは原則として普通の給与と同じように扱われます。
所得税の対象になりますし、社会保険料を決めるときの報酬にも含まれます。
なので、
「家賃3万円分を会社が負担してくれている」
という感覚だったとしても、実際には3万円がそのまま手取りで増えるわけではありません。
借り上げ社宅は、所得税の計算が違います
一方、会社が物件を契約して、従業員に社宅として貸す場合には別のルールがあります。
所得税では、国税庁の決めた方法で「賃貸料相当額」という金額を計算します。
建物や土地の固定資産税の課税標準額などから求める金額です。
そして従業員が、その賃貸料相当額の50%以上を家賃として負担していれば、会社から社宅を安く借りていることによる利益は、原則として給与として課税されません。
ここで注意したいのは、
「実際の家賃の50%を払えば非課税」という意味ではない
ことです。
基準になるのは、あくまで国税庁の計算で求める「賃貸料相当額」です。
僕は実際の家賃6万円のうち3万円を負担していたので、ちょうど半分です。
ただ、それだけでは税務上の条件を満たしていたかどうかは判断できません。
当時の物件の固定資産税の課税標準額などを確認しないと、正確な計算はできません。
そこまでの資料は、さすがに持っていません笑
社会保険は、さらに別の計算でした
社会保険では、社宅を「現物給与」として評価します。
都道府県ごとに決められた住宅の価額に広さをかけて、社宅に住むことで受けている利益を金額に換算します。
そして、そこから本人が払っている家賃を差し引きます。
差額が残れば、その金額が給与と合わせて標準報酬月額の計算に使われます。
つまり、
病院が家賃3万円を出してくれたから、その3万円がそのまま社会保険上の収入になる
という計算ではありません。
所得税とも違うルールです。
記事30を書いたとき、僕は、
「会社が負担してくれた分が収入扱いになって、社会保険料も上がっていたのかな」
くらいに思っていました。
実際には、そんなに単純な話ではありませんでした笑
2026年10月から、社会保険の計算方法が変わります
この記事を書いている2026年9月時点では、ちょうど制度の変更直前です。
2026年10月1日から、社宅の社会保険上の評価方法が変わります。
これまでは、居間や寝室などの「居住用の部屋」が何畳あるかをもとに計算していました。
玄関、台所、トイレ、浴室、廊下などは対象外でした。
それが2026年10月からは、
住宅の総面積1平方メートルあたり
で計算する方式になります。
玄関やキッチン、トイレ、浴室、廊下なども含めた床面積が対象になります。
別棟の物置や車庫、共同で使う部分などは除かれます。
ちなみに、都道府県ごとの単価は基本的に勤務地を基準にする仕組みですが、これは2026年10月から新しく始まるルールではなく、以前からの考え方です。
今回変わる大きなところは、
「居住部分の畳数」から「住宅全体の平方メートル数」になること
です。
前回の記事で、
「同じ50平米でも、廊下に面積を使うと居室が狭くなる」
と書きました。
今度は社会保険の世界では、その廊下まで住宅の面積として数えられるようになります。
こんなところで廊下の話がまた出てくるとは思いませんでした笑
結局、どれくらい得だったのか
ここまで調べても、
「僕は毎月ぴったり○円得をしていました」
とは言えません。
所得税では賃貸料相当額を計算するための情報が必要ですし、社会保険にも独自の現物給与価額があります。
当時、病院が実際にどう給与処理していたのかも確認しないと分かりません。
ただ、少なくとも分かったことがあります。
借り上げ社宅は、
「家賃の半額を会社が払ってくれたから、その金額がそのまま非課税になる」
という単純な仕組みではありません。
一方で、同じ金額を現金の住宅手当として受け取る場合と比べると、条件によっては税金や社会保険の面で有利になりやすい仕組みです。
さらに僕の場合は、敷金や礼金、契約の手間なども自分では負担していませんでした。
そう考えると、
たぶん、かなりありがたい制度だった
というのが今のところの結論です笑
ただし、制度の設計や物件、本人負担額などによって扱いは変わります。
実際に利用する場合は、自分でネット上の計算式だけを見て判断するより、勤務先の給与担当などに確認するのが確実だと思います。
でも、補助が減っても何も削りませんでした
ここからは、制度の話ではなく、僕自身の話です。
年次が上がって、家賃補助が減ったことがありました。
そのとき、生活で何かを削ったかというと、
何も削っていません。
貯金のスピードが少し落ちた。
それだけでした。
赤字になったわけでもありません。
当時は貯金の目標額も特に決めていなかったので、
「まあ、少しずつ増えていけばいいかな」
くらいの感覚でした笑
そもそも、住んでいたのは家賃6万円の部屋です。
半額を補助してもらっていたとはいえ、家賃そのものがそこまで高くありません。
だから補助が減っても、家計へのダメージは大きくありませんでした。
今振り返って思うのは、
補助がいくら出るかより、家賃そのものがいくらなのかのほうが、ずっと効いていた
ということです。
補助をたくさんもらうために、固定費を上げる
当時の同期の、
「せっかく半額出るのだから、高い部屋に住んだほうが得」
という考え方も分かります。
僕も少し損をした気分になっていましたから笑
でも今の僕なら、少し違う見方をします。
たとえば家賃6万円なら、半額補助で自分の負担は3万円です。
家賃10万円なら、半額補助で負担は5万円です。
後者のほうが会社からは多く補助してもらっています。
でも、自分から出ていくお金も多い。
そして補助が減ったり、制度のない職場へ移ったりすれば、高くなった家賃はそのまま残ります。
もちろん、
「せっかくだから、いい家に住む」
という選択に本人が価値を感じるなら、それでいいと思います。
住環境にお金を使うこと自体が悪いわけではありません。
ただ、
補助を最大限もらうことと、自分のお金が多く残ることは同じではない。
今ならそう考えます。
同期で一番安い部屋に住んで、少し損をした気分になっていた僕は、結果的にはそれでよかったのだと思います。
お金に、あまり興味がなかった頃
当時の僕は、お金にあまり興味がありませんでした。
たくさん増やしたいという気持ちも特になく、かといって大きな無駄遣いをする性格でもありませんでした。
使いたいことに使って、残った分が貯金されていけばいい。
そんな感じでした。
医師という仕事を始めたばかりでしたし、
「まずは仕事を頑張ろう」
と思っていました。
余暇は遊びつつ……笑
今はFIREを目指すと言っています。
でも、それもお金そのものを増やしたいというより、
自由や選択肢を増やしたい
というのが目的です。
その意味では、当時と今で意外と変わっていないのかもしれません。
住宅補助で職場を選んだことは、一度もありません
転職するとき、住宅補助が手厚いかどうかを理由に職場を選んだことはありません。
福利厚生が充実しているに越したことはないと思います。
ただ、僕が先に見ていたのは別のところでした。
どんな仕事をするのか。
どのくらい働くのか。
どこで働くのか。
何を学べるのか。
その仕事を自分が続けられそうなのか。
そして、待遇全体として自分が納得できるのか。
住宅補助は、その中の一つにすぎませんでした。
これはあくまで僕の考え方ですが、住宅補助も含めて細かな手当がたくさんあるより、
最終的に自分が受け取る待遇全体が分かりやすいほうが好きです。
住宅補助が手厚い職場を否定したいわけではありません。
家族構成や勤務地、会社側の事情によって、福利厚生にはいろいろな意味があります。
ただ、僕自身はこれまで、
「住宅補助があるから、この職場にしよう」
と思ったことはありませんでした。
金額に出ない価値もありました
そして、借り上げ社宅を振り返ると、金額以外の価値もかなり大きかったと思います。
契約の手続きをしなくていい。
保証人を探さなくていい。
敷金や礼金について考えなくていい。
退去のときのやり取りもしてくれる。
初めて社会人になったばかりで、自分で部屋を探して契約することにも少し不安があった僕にとって、
住む場所のことをあまり考えなくてよかった
というのは、かなり大きなメリットでした。
窓のヒビとカビを謝って、鍵を返すだけで終わった退去の日のことは、今でも覚えています笑
こういう気楽さは、税金の計算には出てきません。
結局、得だったのか
借り上げ社宅は、結局得だったのか。
たぶん、得でした。
現金の住宅手当とは税金や社会保険の扱いが違い、条件によっては有利になりやすい仕組みです。
僕の場合は、契約や初期費用の負担が少なく、何より気楽でした。
でも、それによって僕の選択が変わったことはありませんでした。
補助をたくさんもらうために高い部屋へ住むこともなかった。
補助が減っても生活を変えなかった。
住宅補助を理由に職場を選んだこともありません。
振り返って一番効いていたのは、
補助の大きさではなく、家賃そのものの低さでした。
制度は、ありがたく使う。
でも、制度に合わせて固定費を上げない。
たぶん、僕にはそれくらいがちょうどよかったのだと思います。
それではまた。
※この記事は、借り上げ社宅と住宅手当についての一般的な制度と、僕自身の経験を書いたものです。税金や社会保険の扱いは、勤務先の制度、契約形態、本人負担額、加入する健康保険などによって異なる場合があります。実際の扱いについては、勤務先の給与担当や税理士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
