「一駅分歩いてみては?」と言っている僕が、座りっぱなしでした ―『歩く マジで人生が変わる習慣』書評
診察室で、患者さんに生活のアドバイスをすることはよくあります。
食事と運動に気をつけてください。
お酒は飲みすぎないほうがいいですね。
運動は、日常生活の中に組み込めて、日々できることから始めるのがいいですね。
なるべく歩くほうがいいです。
「そうですね〜、一駅分くらい歩くのはいかがでしょうか?」
だいたい、こんな感じです。
では、そう言っている僕自身はどうなのか。
診察室にいると、座っている時間が圧倒的に長いです。
習慣的な運動の時間も取りづらい働き方です。
散歩に行かない日は、仕事だけで1日2,000歩くらいでした笑
言っていることと、やっていることが、あまり一致していません。
生活習慣を変えるのは、けっこう大変です
もっとも、これは医療の仕事に限った話ではないと思います。
どんな仕事の人にも、それぞれ事情があります。
仕事が忙しい。
家族のことがある。
疲れている。
時間がない。
そういう逆風がある中で、ある種ストレスをかけて、無理をして生活習慣を変えていくのは、かなり労力のかかることだと思います。
診察室で「運動してください」「歩いてください」と言うのは簡単です。
でも、言われた側が実際に始めるのは簡単ではありません。
自分を振り返っても、そう思います。
話がそれました笑
僕のために用意された本かと思いました
日々の行き詰まり感や、なんとなく鬱屈とした毎日。
そこまでひどくはないのですが笑、自分の心や体の状態をもう少しよくできないかな、と思うことはよくあります。
自分の生活や習慣に、何か変えられることはないか。
どうすれば、もう少し気持ちよく毎日を過ごせるのか。
そんなことをよく考えています。
そんなとき、本屋で目に飛び込んできたのが、
『歩く マジで人生が変わる習慣』
でした。
もう、僕にぴったりですよね〜笑
僕のために用意されたのではないかと思いました。
発売されて間もない時期だったのか、本屋にたくさん積み上がっていて、迷わず手に取りました。
少し中を見ると、単に「ウォーキングは健康にいいですよ」というだけではありません。
人間はそもそも二足歩行する生き物で、現代の生活の中で失われてきた身体性を、歩くことで取り戻していく。
そんな話が、歴史、脳、仕事、靴、自然など、いろいろな方向から書かれていました。
興味津々です笑
前回の書評では、帯の宣伝文句に釣られて本を買いました。
今回は帯ではなく、タイトルと中身に惹かれて買った形です。
印象に残ったこと
この本には、印象に残った話がかなりありました。
全部紹介すると要約記事になってしまうので、特に残ったものだけ書いてみます。
歩きながら考えていた人たち
まず面白かったのが、歩くことと思考の話です。
ベートーヴェンやニーチェ、スティーブ・ジョブズなど、歴史に名前が残る人たちの中には、散歩や歩きながらの対話を大事にしていた人がかなりいたそうです。
僕はこれまで、
考える=机に座る
というイメージをかなり強く持っていました。
でも確かに、自分でも歩いているときに急に考えがまとまることがあります。
ブログに書きたいことが浮かぶのも、意外と机の前ではなかったりします。
Facebookには、歩くための場所まであった
Facebookの本社についての話も印象に残りました。
当時のFacebook本社には大きな屋上公園があり、そこに歩くための道が作られ、歩きながらミーティングをする文化もあったそうです。
会議というと、会議室に集まって座るもの。
僕にはそんなイメージがあったので、これは少し衝撃でした。
座りすぎも、気になりました
もう一つ、耳が痛かったのが座りすぎの話です笑
長い時間座ったままでいることは、健康上あまりよくないことが知られています。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにすることが勧められています。
診察室の椅子に一日座っている身としては、なかなか耳が痛いです笑
靴について考えたことがありませんでした
靴の話もかなり面白かったです。
本では、現代の靴はクッション性が高く、かかとに高さがあり、歩きやすく作られている一方で、それによって本来の足の使い方から離れているのではないか、という問題提起がされています。
そして紹介されていたのが「ベアフットシューズ」です。
靴底が薄く、足の指が比較的自由に広がり、裸足に近い感覚で歩くことを意識した靴です。
この本を読んだあと、僕は妻に、
「この本めっちゃ面白いよ」
とかなり勧めていました笑
ベアフットシューズも気になっている、と話していたところ、妻もこの本を読んでくれました。
そして後日、
ベアフットシューズをプレゼントしてくれました。

自分で買ったわけではありませんでした笑
今はウォーキングに行くときに履いています。
毎日履いているわけではないので、
「人生変わりました!」
とまではまだ言えません笑
研究上も、ミニマリストシューズによって足の筋力などが改善する可能性は示されていますが、まだ研究の質や数には限界があります。
万能な靴だと思うより、こういう考え方もあるんだな、と試しているくらいです。
それでも、本を読んで気になったものを妻も読んで、その流れで靴まで生活に入ってきたので、この本はかなり我が家に影響を与えています笑
自然の中を歩くこと
もう一つ印象に残ったのが、自然の中を歩く話でした。
舗装された平らな道ではなく、山やトレイルのような場所です。
足元も一定ではなく、次に何があるのかも完全には分かりません。
その場その場で体を使い、判断しながら進んでいく。
本では、それも人間が生き物として持っていた感覚を取り戻す一つの方法として紹介されていました。
これはまだ、僕にはあまりできていません。
歩くことの一番の良さは、ハードルの低さでした
この本を読んでから、歩くことをかなり意識するようになりました。
そして自分でやってみて思ったのが、
歩くことのコスト、めちゃくちゃ低いな
ということです笑
ありがたいことに、僕は今のところ普通に歩けます。
椅子に座っていても、1秒後には立ち上がれます。
家から数分後には散歩を始められます。
ジムと契約する必要もありません。
予約もいりません。
誰かと予定をすり合わせる必要もありません。
着替える必要すら、ほとんどありません笑
ただ立ち上がって、玄関を出るだけです。
ランニングとなると、
「ウェアがいるかな」
「汗をかくから着替えないと」
など、僕の場合は少しハードルが上がります。
でも歩くだけなら、パジャマでなければだいたい大丈夫です。
たぶん笑
ほぼ毎日、朝に歩くようになりました
この本を読んだのは数か月前です。
最初は、時間があるときや、やることがないとき、気持ちがモヤモヤするときに歩いていました。
歩いたあとは、気持ちがスッキリしていることが多いです。
逆にストレスを強く感じている時期は、歩数が少ないことが多い気もしました。
もちろん、
「歩いていないからストレスが増えた」
と単純には言えません。
仕事が忙しい日は、ただぐったりしているだけだったりします笑
ただ、自分にとって歩くことが気分転換になるのは確かなようでした。
妻も、僕がモヤモヤしていそうなときは、
「散歩行ってきたら?」
とか、
「一緒に散歩行く?」
と言ってくれるようになりました笑
そうやって少しずつ歩く日が増えて、最近はほぼ毎日散歩しています。
朝起きて、数十分から1時間くらいです。
散歩をしなかった頃は仕事だけで2,000歩くらいの日もありましたが、最近は1日9,000歩以上歩いている日が多くなりました。
朝は一人で始まり、途中から家族が増えます
朝は、まず一人で歩き始めます。
一人だと、自分のペースで歩けるのがいいところです。
走っているわけではありませんが、早歩きくらいでずっと歩いています。
しばらくすると、妻と娘が起きてくるので、途中で合流します。
そこから少し一緒に歩いて、家に帰ります。
ベビーカーを押しながら僕のペースで早歩きするのは、さすがに少し厳しいですね笑
ちなみに、歩くことについてはもう一冊、
『病気の9割は歩くだけで治る!』
という本も読みました。
タイトルはかなり強いです笑
著者も医師ですが、僕がこのブログで「歩くだけで病気が治る」と一般化して書くのは難しいところです。
ただ、歩き方について参考になったことがありました。
腕をしっかり後ろに振る。
今はこれを意識しています。
ベビーカーを押していると腕が振れないので、妻と交代しながら押しています笑
休みの日には、家族で散歩しながらパン屋さんまで行くこともあります。
焼きたてのパンを買って家に帰り、みんなで食べる。
休日という感じがして、けっこう好きな時間です。
変わったこと
一番変わったのは、気持ちのモヤモヤが減った気がすることです。
仕事の日は相変わらず疲れます。
子育てもありますし、身体的にはぐったりしている日もあります笑
でも、以前よく感じていた、なんとなく鬱屈した感じは少し減った気がします。
考えごとも整理しやすくなりました。
このブログも含めて、自分の気持ちを言葉にして外へ出すのが、少しスムーズになった気もします。
あくまで僕自身の感覚ですが。
今のところ、僕にとってのデメリットはほぼありません笑
まだできていないこと
この本は、
「明日から毎日10km歩け」
みたいなことを要求する本ではありません。
いろいろな方向から、歩くことそのものの価値を伝えている本でした。
なので、とりあえず毎日歩くようになっただけでも、僕としてはかなり影響を受けています。
著者は海外で何泊もかけてトレッキングをした経験も書いています。
もちろん、それを全員にやりましょうという話ではありません。
ただ、自然の中を歩くことについてはかなり気になっています。
普段歩いているのは、ほぼ街中です。
もう少し木や土のあるところを歩く時間も増やしてみたいなと思っています。
医師として、歩くことをどう見ているか
患者さんに歩くことを勧めること自体は、今でもかなり合理的だと思っています。
特にいいのは、
生活の中に入れやすいこと
です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、成人にはまず「今よりも少しでも多く身体を動かす」ことが勧められています。
一つの目安として、歩行またはそれと同等以上の身体活動を1日60分以上、約8,000歩以上に相当する量が示されています。
もちろん、
8,000歩に届かなければ意味がない
という話ではありません。
このガイド自体も、個人差を踏まえて、できることから始めることを重視しています。
僕が最近9,000歩歩いているのも、
「9,000歩が正解だから」
ではなく、朝散歩をしていたら結果的にそのくらいになっているだけです。
歩くことにも、もちろんリスクがゼロなわけではありません。
関節に痛みがある方、心肺機能に問題がある方、体力が大きく落ちている方、転倒リスクが高い方などは、同じようには考えられません。
暑い日の熱中症にも注意が必要です。
それでも、多くの健康な人にとっては、特別な設備を必要とせず始めやすい身体活動だと思います。
ランニングなら運動強度や衝撃が上がりますし、水泳ならプールまで行って、着替えて、という手間があります。
プールに住んでいる人は、なかなかいないですからね笑
生活習慣を変えるのは大変だ、と最初に書きました。
その中で歩くというのは、
かなり小さい労力で始められる選択肢
なのだと思います。
これからも、勧めます
これからも患者さんには、歩くことを勧めると思います。
結局、言うことは最初に書いたものとそんなに変わりません。
「生活の中に取り入れるのが大事ですよ」
「一駅分くらい歩いてみてはどうでしょう」
たぶん、これからも同じことを言います。
変わったのは、僕のほうです。
今は、僕も毎朝歩いています笑
それではまた。
※この記事は書評と、僕自身の体験を書いたものです。歩行を含む身体活動の適切な量や強度は、年齢・体力・持病などによって異なります。運動を制限されている方や、歩行時に症状がある方は、主治医などに相談してください。
