『DIE WITH ZERO』書評 ― お金を「増やす」ことしか考えていなかった僕へ
読んでよかった本を紹介するシリーズ、第1弾です。
最初の一冊は、これしかないと思っていました。
『DIE WITH ZERO』です。
かなり有名な本なので、読んだことがある方も多いかもしれません。
タイトルだけ見ると、なかなか刺激的です。
「ゼロで死ね」と言われると、かなり極端な本に見えます笑。
ただ、実際に読んでみると、単なる浪費のすすめではありません。
むしろ、お金、時間、健康、経験、家族との関係をどう考えるかという、かなり深い本でした。
僕自身、この本を読んで価値観がかなり変わりました。
生き方が変わったと言っても、過言ではないかもしれません。
今回は、そんな『DIE WITH ZERO』について、自分なりに感じたことを書いてみます。
読む前の僕 ― 「ゲームなんていくらでも買うで笑」
この本が話題になっていることは、読む前から知っていました。
本屋さんでもよく目に入っていましたし、タイトルのインパクトも強かったです。
ただ、読んだのは数年前です。
当時の僕は、お金を「増やす」ことにはかなり興味がありました。
投資をする。
資産形成をする。
将来の選択肢を増やす。
そういう方向には意識が向いていました。
一方で、お金を「減らす」こと、つまりどう使うかについては、あまり深く考えていませんでした。
消費については、
「買いたいものを買ったらええやん」
「欲しいものもたくさんあるし」
「ゲームなんていくらでも買うで笑」
くらいの感覚でした。
もちろん、今思えばそれはそれで若さもあったと思います笑。
読むきっかけになったのは、リベ大の両学長が勧めていたことです。
「この答えが欲しい」という明確な目的があったわけではありません。
ただ、結果的にこの本は、自分のお金との向き合い方をかなり変えてくれました。
この本の中心メッセージ
この本の中心にあるのは、
死ぬときに大金を残しすぎるのは、使えるはずだった人生の時間や経験を失ったということでもある
という考え方だと思っています。
もちろん、「本当に残高ゼロで死ね」という単純な話ではありません。
老後資金は必要です。
医療費も必要です。
生活防衛資金も必要です。
ただ、必要以上に貯め込みすぎると、若い時期、健康な時期、家族と過ごせる時期にしかできない経験を逃してしまう。
この問題提起が、かなり刺さりました。
突き詰めると、これは「なぜ人は生きるのか」という問いにもつながる話だと思います。
僕自身の答えとしては、人は幸せになるために生きているのだと思っています。
そして、幸せに生きるためには、お金と時間をどう使うかを考えなければならない。
『DIE WITH ZERO』は、そのための考え方を提示してくれる本だと感じました。
僕なりに整理すると、特に大事だと思ったポイントは5つです。
1つ目は、経験には配当があること。
2つ目は、お金・時間・健康のバランス。
3つ目は、人生をタイムバケットで考えること。
4つ目は、子どもや家族へのお金は早めに渡すという考え方。
5つ目は、老後不安を仕組みで管理することです。
順番に書いていきます。
① 経験には「配当」がある
本書で特に印象的だったのは、経験は一度きりの消費ではなく、その後も思い出として何度もリターンを生む、という考え方です。
たとえば旅行に30万円使ったとします。
その価値は、旅行当日だけで終わるわけではありません。
写真を見返す。
家族とそのときの話をする。
人生の節目として記憶に残る。
ブログに書く。
価値観が変わる。
そういう形で、経験は後から何度も配当を生んでくれます。
単なる浪費ではなく、人生に長く残る経験への投資としてお金を見る。
この発想は、かなり大事だと思いました。
僕自身、思い当たることはたくさんあります。
子どもの頃の家族旅行。
部活動で頑張ったこと。
試合に勝った経験も、負けた経験も。
そこで交わした友達や先生との会話。
大学時代のバイト。
初めて自分の運転で行った車旅行。
初任給で買った両親へのプレゼントを喜んでもらえたこと。
初めて彼女と付き合った経験も、別れた経験も。
妻に祝ってもらった誕生日。
新婚旅行の代えがたい時間。
美味しかったご飯、美味しくなかったご飯笑。
現地のスーパーでの買い物。
ロードスターであちこちドライブした思い出。
そして、無事に第一子が生まれた瞬間。
思い返すと、たくさんあります。
思い出の解像度は、時間とともに少しずつ下がっていきます。
それでも、その経験そのものはなくなりません。
当時はしんどかった経験でさえ、時間が経つと良い思い出になっていることもあります笑。
そうした経験は、今も僕を幸せな気持ちにしてくれます。
まさに「思い出の配当」です。
そのタイミングでしかできない経験がある
大事なのは、経験の多くが「そのタイミングでしかできなかった」ということです。
たとえば、今から僕がテニス部員として頑張ることは難しいです笑。
体力、気力、家族、仕事、怪我のリスク。
いろいろな要素を考えると、現実的ではありません。
大学時代の友人と旅行に行こうとしても、今はかなりハードルが高いです。
お互いに子育て中だったり、住んでいる場所が違ったり、仕事の都合があったりします。
日程を合わせるだけでも大変です笑。
もちろん、今だからこそできる経験もあります。
ただ、過去のあの時期にしかできなかった経験も確実にあります。
だからこそ、「いつかやればいい」と先送りしすぎるのは危ないのだと思います。
本書では、若い時期に借金をしてバックパッカー旅行をした人の話が紹介されています。
どんな経験が良いものになるかは、やる前には保証されません。
でも振り返ってみると、しんどかった経験さえ良い思い出になっていることがあります。
だから僕も、なるべくいろいろな経験をしていきたいと思うようになりました。
② お金・時間・健康のバランス
本書では、人生の価値はお金だけでは決まらないと考えます。
お金だけでなく、時間と健康がそろって初めて、お金を有効に使える。
これはとても現実的で、刺さる考え方でした。
若い頃は、時間と健康はあるけれど、お金が少ない。
中年期になると、お金は増えてくるかもしれないけれど、仕事や家庭で時間が少なくなる。
老年期になると、お金はあっても、健康や体力が落ちているかもしれない。
つまり、人生の後半まで「使うこと」を先送りしすぎると、お金はあるのに、それを楽しむ体力も、自由な時間も、一緒に楽しむ相手も減っている、ということが起こり得ます。
ここは本当に大事だと思います。
お金は数字で見えるので、わかりやすいです。
一方で、体力や時間、人間関係は数字で見えにくい。
でも、実際にはそれらがないと、やりたいことはできません。
「お金が貯まったらやる」
「いつか時間ができたらやる」
そう思っているうちに、お金以外の条件が失われることがある。
そう考えると、逆説的に「自分は何がしたいのか」をしっかり考えることが大事になります。
それが次のタイムバケットの話につながります。
③ 人生を「タイムバケット」で考える
本書では、やりたいことリストをただ作るのではなく、年齢ごとのバケツに分けることが勧められています。
たとえば、
30代でやりたいこと。
40代でやりたいこと。
50代でやりたいこと。
60代以降でやりたいこと。
このように分けて考えるということです。
なぜなら、同じ経験でも、適した年齢やタイミングがあるからです。
子どもが小さい時期の旅行。
体力がある時期のアウトドア。
親が元気なうちの家族旅行。
若いうちの挑戦。
こういったものは、後からお金だけで取り戻すことが難しいです。
一緒にやりたい人の年齢や体力も変わります。
極端なことを言えば、事故や病気でいなくなっているかもしれません。
単なる「やりたいことリスト」よりも、年齢やタイミングを意識できる分、実用的な道具だと思います。
……と、偉そうに紹介しておきながら、白状すると、僕自身はまだタイムバケットを作れていません笑。
何がしたいかという漠然とした思いはあります。
ただ、「いつかできるだろう」という安直な気持ちもまだ残っています。
日々のタスクに忙殺されている、という言い訳もあります笑。
それに、大事な人が倒れるかもしれない、いなくなるかもしれない、という想定自体をしたくない気持ちも正直あります。
それでも、実家に帰ったり、妻と子どもと新しい場所に出かけたり、いつもは使わないことにお金を使ってみたり、少しずつ小さな挑戦はしています。
タイムバケットも、そろそろ本気で作ってみたいです。
今ぱっと思いつくのは、家族で客船に何泊かする船旅です笑。
船旅は若くないと、楽しむ体力がなくなりそうです。
今ならまだプールで泳げそうですし笑。
④ 子どもや家族へのお金は、早めに渡す
相続についても、本書はかなりはっきりした考え方を示しています。
死後に大きな金額を渡すより、相手が本当に必要としている時期に渡した方が価値が高い、という考え方です。
たとえば、子どもが60歳のときに相続で大金を受け取るより、30代・40代で住宅、教育、子育て、挑戦のために支援を受けた方が、人生への影響は大きいかもしれません。
つまり、贈与や支援にも「早すぎず、遅すぎず、価値が高いタイミング」があるということです。
前提にあるのは、お金はそれ単体では意味がなく、価値あるものに変換してこそ意味がある、という考え方です。
そして、その変換効率は、ある程度若い時期の方が高い。
80歳のときの100万円と、20歳のときの100万円では、価値が全く違うと思います。
これは、投資したら増えるという意味ではありません。
20歳で100万円があれば、
「どこに旅行に行こう」
「海外旅行に行ける」
「車の頭金にしよう」
「結婚指輪を買おう」
「親にプレゼントを買おう」
など、いろいろな可能性があります。
一方で80歳では、旅行に行く体力がないかもしれません。
病気があるかもしれません。
車をもう運転しないかもしれません。
配偶者や親は、すでにいないかもしれません。
もちろん人によります。
ただ、年齢によってお金の価値が変わることは、かなり実感しやすい話だと思います。
多くの場合、相続は亡くなったときに発生します。
つまり、お金を渡すタイミングとしては、かなり遅い。
そこに対する問題提起として、とても印象に残りました。
⑤ 老後不安は、仕組みで管理する
とはいえ、若いうちにお金を使えない一番の理由は、未来への不安です。
特に、働けなくなった老後の不安。
病気への金銭的リスク。
長生きしてお金が足りなくなるリスク。
これらは現実にあります。
本書は、「全部使え」と言っているわけではありません。
長生きリスクや医療費リスクは、保険、年金、資産配分などで管理する。
そのうえで、必要以上に恐怖で貯め込みすぎないようにする。
そういう立場だと理解しています。
無謀な浪費のすすめではなく、合理的に不安を管理したうえで、使うべき時期には使うという考え方です。
本書では、米国の文脈で即時年金のような仕組みも紹介されています。
まとまったお金を払い込むことで、条件に応じて亡くなるまで一定の年金を受け取るという考え方です。
こうした仕組みの魅力は、資産運用で増やすことよりも、死ぬまで一定のお金が入ってくる安心感にあるのだと思います。
株や投資信託は、長期的には値上がりが期待できるかもしれません。
ただ、短期的には大きく下落するリスクもあります。
よほど資産に余裕がある人でなければ、老後の生活に不安は残ると思います。
その点、一定のお金が定期的に入ってくるという安心感は、かなり大きいです。
損得というより、感情面で老後を安心させる仕組みとして優れているのだと思います。
ただ、こうした仕組みをそのまま日本で使うのは、なかなか難しそうです。
日本にも年金型の商品はありますが、手数料や条件、受給開始時期などを考えると、消費者にとってわかりやすく有利なものばかりではない印象があります。
あくまで個人の感想ですが笑。
そのため、現時点では自分で老後対策を組み立てる必要がありそうです。
高配当株のポートフォリオを作って配当を得るのか。
投資信託を積み上げて定率で取り崩すのか。
その両方なのか。
このあたりは、これからも考え続けるテーマです。
もちろん、これは僕個人の考えであり、特定の商品や投資手法を勧めるものではありません。
読んだあと、僕はどう変わったか
「買いたいものを買ったらええやん」だった僕は、この本を読んでから、少し考え方が変わりました。
このお金は、後から配当を生む経験に変わるのか。
そう考えるようになりました。
ロードスターで妻と出かけた旅行。
家族での外出。
普段なら使わないことへのちょっとした支出。
本を買うこと。
移動のグレードを上げること。
新しい場所に行くこと。
そういうものを、単なる消費ではなく「思い出の配当の原資」として考えられるようになりました。
これが一番大きな変化だと思います。
お金を増やすことだけを考えていた頃より、今の方がお金と健全に付き合えている気がします笑。
もちろん、今でも無駄遣いはしたくありません。
ただ、何でもかんでも我慢して貯めるのが正解とも思っていません。
貯めること。
使うこと。
守ること。
経験に変えること。
そのバランスを考えるようになりました。
どんな人におすすめか
『DIE WITH ZERO』は、お金の本でありながら、お金だけの本ではありません。
むしろ、「どう生きるのがいいか」を考えるための本だと思います。
貯めることが目的になっている人。
使うことに罪悪感がある人。
老後が不安で、必要以上にお金を抱え込んでしまう人。
逆に、何となく消費しているけれど、本当に満足しているのかわからない人。
そして、僕のように「増やす」ことしか考えていなかった人。
そういう方には、かなり刺さる本だと思います。
もちろん、本の内容をそのまま全て実践するのは簡単ではありません。
僕自身、タイムバケットすらまだ作れていません笑。
それでも、この本を読むことで、お金の見方はかなり変わりました。
お金は、増やすためだけにあるわけではありません。
人生をより良くするために、時間や経験に変えていくものでもあります。
そのことに気づかせてくれた一冊でした。
読んでよかった本シリーズの第1弾として、やはりこの本を選んでよかったと思います。
