大腸カメラの前日、何を食べていいのか ― 検査の質は、食事だけでは決まりません

医療・健康

「大腸カメラの前日って、何を食べたらいいんですか?」

検査の説明をしていると、よく聞かれる質問です。

野菜はダメ。

きのこもダメ。

海藻もダメ。

種のあるものも避けてください。

……こうやって並べていくと、

「じゃあ何を食べたらいいんですか?」

となるのも当然だと思います笑。

この記事では、まず「前日に何を食べていいのか」という疑問に答えます。

そのうえで、普段大腸カメラをしている側から、

なぜそこまで食事を気にするのか。

そして、

実際には食事だけで検査の質が決まっているわけではない

という話まで書いてみます。

そもそも、なぜ前日の食事に制限があるのか

大腸カメラは、大腸の内側をカメラで直接見る検査です。

CTやレントゲンのように体の外から見るのではなく、腸の粘膜をそのまま目で観察しています。

なので、話はかなり単純です。

便や食べ物が残っていると、その下が見えません。

大腸カメラでは、大きながんだけを探しているわけではありません。

数mm程度の小さなポリープや、わずかな粘膜の変化を探すこともあります。

そのため、検査をするときには腸の中ができるだけきれいな方がいい。

そこで行うのが「前処置」です。

大きく分けると、

前日に残りにくい食事をすること。

そして、

下剤で腸の中をきれいにすること。

この2つがあります。

前日の食事は、翌日の下剤で腸をきれいにしやすくするための準備、と考えると分かりやすいと思います。

前日に避けた方がいいもの

基本的には、

食物繊維が多いもの、消化されにくく形が残りやすいもの

を避けます。

たとえば、野菜、きのこ、海藻、こんにゃくなどです。

種も結構残ります。

いちご、キウイ、トマト、ごまなどですね。

これは説明書に書いてあるだけの話ではなく、

実際に大腸カメラをすると見えます。

種はかなり目立ちますし、きのこも「あ、きのこだな」と分かる形で残っていることがあります笑。

逆に、前日は消化されやすく、残りにくいものを選びます。

白いごはん。

うどん。

具の少ない食パン。

卵。

豆腐。

脂肪の少ない肉や魚などです。

ただし、具体的に何を食べてよいかは施設によって多少違います。

ネットの記事よりも、実際に検査を受ける医療機関から渡された説明書を優先してください。

これが一番大事です。

何時まで食べていい?

僕が働いているクリニックでは、前日は21時までに食事を終えてもらうよう案内しています。

ただ、できればあまり遅くならない方がいいと思っています。

前日の食事が遅くなれば、その分だけ腸の中に食べ物が残る可能性もあります。

何日前から気をつけるかについては、便秘のない方なら、通常は前日の食事を意識するところからで十分なことが多いです。

最近の海外のガイドラインでも、通常の方については食事制限を基本的に検査前日に限定する考え方になっています。

一方で、

「以前、大腸カメラの前処置がうまくいかなかった」

「かなり便秘が強い」

という方は、もっと前から調整した方がよい場合があります。

ここは自分で絶食期間を延ばすのではなく、事前に医療機関へ相談してください。

検査食は必要?

大腸カメラ専用の「検査食」もあります。

レトルトなどで、

「前日はこれだけ食べてください」

とセットになっているものです。

便利ではありますが、全員が必ず検査食を食べなければいけないわけではありません。

僕の勤務先では、検査食を必須にはしていません。

普通の食事の中から残りにくいものを選んでもらう形にしています。

一方、検査食を使う施設もあります。

これも、

「どちらが正しい」

という話ではありません。

施設ごとに前処置の方法が違うだけです。

食事を考えるのが面倒だったり、「何を食べたらいいか分からない」という方には、検査食はかなり楽だと思います。

なぜ施設によって説明が違うのか

「ネットで調べた内容と、病院でもらった説明が違う」

ということもあると思います。

これは珍しいことではありません。

大腸カメラの前処置には、いろいろな種類があります。

使う下剤も違います。

下剤を自宅で飲む施設もあれば、病院やクリニックへ来てから飲む施設もあります。

飲み始める時間も違います。

前日の食事や、前日の夜に追加する薬についての考え方も少しずつ違います。

日本消化器内視鏡学会の説明でも、下剤を自宅で飲む場合と施設で飲む場合があり、前日の食事についても軽い食事や検査食など施設によって方法が異なるとされています。

なので、

ネット上に「唯一の正しい前処置」があるわけではありません。

この記事も一般論です。

最終的には、検査を受ける施設の指示に従ってください。

ただ、検査の質は食事だけでは決まりません

ここからが、内視鏡をしている側から一番書いておきたいところです。

ここまで前日の食事について散々書いてきましたが、

腸がきれいになるかどうかは、食事だけで決まるわけではありません。

僕の実務上の感覚では、特に大きいのは、

腸管洗浄剤を指示された方法でしっかり進められたかどうか

です。

食事にあまり注意できていなかった方でも、下剤がしっかり効いて、腸の中が十分きれいになっていることはあります。

もちろん繊維や種などが残ることはあるので、

「じゃあ食事なんて何でもいいんですね」

という話ではありません笑。

逆に困るのは、

食事にもあまり気をつけていなくて、

さらに下剤もうまく飲めなかった場合です。

便が十分出なければ、当然ながら腸の中に残ります。

そして残っている量が多ければ、検査そのものが難しくなります。

つまり大事なのは、

「前日の食事で100点を取ること」ではなく、食事と下剤を合わせて、検査できる状態まで腸をきれいにすること

なんです。

下剤が飲めないことはあります

大腸カメラで一番しんどいのは、

「検査そのものより下剤だった」

という方もかなりいます。

腸管洗浄剤にはいくつか種類があります。

飲む量も味も方法も違うので、一概には言えません。

ただ、液体の下剤をある程度の量飲むタイプでは、

「味が無理です」

「途中で気持ち悪くなりました」

「吐いてしまいました」

ということがあります。

普段から便秘が強い方では、飲んでもなかなか便が出ず、お腹が張ってさらに飲みにくくなることもあります。

なので、

飲めなかった=本人がちゃんとやらなかった

とは限りません。

体調が悪かった。

味がどうしても無理だった。

吐いてしまった。

便秘が強かった。

いろいろな理由があります。

怒っても何も解決しないので、僕は基本的には状況を確認して、その時点でどうするかを考えます笑。

下剤を飲むのが心配なら、先に相談してください

まず基本は、

処方された下剤を、その施設から説明された方法で飲むこと

です。

下剤によって飲み方が違うので、インターネットで見つけた別の飲み方へ勝手に変更するのはおすすめしません。

そのうえで、製剤や施設の指示によっては、冷やしたり、ストローを使ったりすると飲みやすくなることがあります。

味が心配な方は、事前に相談してみてください。

そして特に伝えてほしいのが、普段から便秘が強い方です。

便秘が強いことが事前に分かっていれば、数日前から排便を整える薬を使うなど、前処置を調整できることがあります。

当日になって初めて、

「実は1週間くらい便が出ないことがあります」

と聞くよりも、事前に分かっていた方がこちらも準備できます。

また、下剤を飲んで強い腹痛や嘔吐が出た、どうしても飲み進められない、といった場合には、無理に続けるのではなく検査を受ける施設へ連絡してください。

内視鏡医から見ると、残便はこう見えています

では、便や食べ物が残った状態で大腸カメラをすると、実際にどうなるのか。

少し残っているくらいなら、検査はできます。

水を入れて洗い、吸いながら観察します。

ただ、残っている量が多くなるほど観察は難しくなります。

僕がよくイメージするのは、

鍋についた小さな傷を探す作業です。

何もついていない鍋なら、小さな傷も見つけやすい。

でも、カレーが鍋肌にたくさんこびりついていたらどうでしょう。

その下の傷は見えません。

大腸カメラも似ています。

実際、不十分な前処置ではポリープや腺腫の検出率が落ちることが研究でも示されています。

腸の中をきれいにするのは、

検査を早く終わらせるためだけではなく、病変を見つける精度を上げるため

なんです。

「洗いながら見ればいい」わけでもありません

もちろん、多少残っていればこちらで洗います。

ただ、何でも洗えばどうにかなるわけではありません。

大きな固形物は内視鏡で簡単に吸引できません。

洗うことで細かく広がり、逆に視界が悪くなることもあります。

僕が急性期病院で働いていた頃、大腸から大量に出血していて、どうしてもその場で出血点を探して止血しなければならないことがありました。

そういう緊急時なら、便や血液が残っていても何度も洗いながら探します。

ただ、それは必要だからやっているだけです。

予定された検査で同じことをするメリットはありません。

視界が悪い状態で無理に進めれば、安全な操作もしにくくなります。

感覚としては、

夜道をライトなしで運転しながら、道路の小さな異常を探すようなもの

です。

できれば、そんな状態で検査したくありません笑。

本当に便が多いと、検査を中止することもあります

頻度としては高くありません。

ほとんどの方は問題なく検査できます。

ただ、内視鏡を入れた瞬間に、

「これは今日は無理ですね」

となるくらい便が残っていることもあります。

そういう場合には、無理に続けず中止することがあります。

中止になれば、困るのは患者さんです。

検査の日をもう一度決める。

仕事や予定をもう一度調整する。

そして、また前処置をする。

下剤も、もう一度です。

かなり大変です。

さらに、中止するほどではなくても、前処置が悪ければ観察できる条件は悪くなります。

不十分な前処置では病変を見逃す可能性が高くなることが分かっていて、程度によっては早めの再検査が必要になることもあります。

だから僕たちが、

「腸をできるだけきれいにしてきてください」

とお願いするのは、単に検査する側が楽をしたいからではありません笑。

せっかく一度大腸カメラを受けるなら、その一回をなるべく質の高い検査にしたい。

それが一番大きな理由です。

指示通りにできなかったら、正直に教えてください

「食べてはいけないものを食べてしまった」

「下剤を全部飲めなかった」

「吐いてしまった」

こういうことがあっても、怒ることはありません。

実際、内視鏡を入れてみないと分からないこともあります。

下剤を予定量まで飲めていなくても、十分きれいになっている方もいます。

逆に、全部飲んでいても前処置が十分ではないこともあります。

だから、その時点の状況を見て判断します。

こちらとしては、

何を食べたか、下剤をどこまで飲めたか、便がどんな状態になったかを正直に教えてもらえる方がありがたいです。

その情報があれば、検査を続けるのか、追加の前処置をするのか、別日にするのかを考えられます。

前日の食事で100点を取ることが目的ではありません

この記事を読んで、

「昨日ごまを食べてしまった……もう検査できないのでは」

と心配する必要はありません。

大腸カメラの前処置は、

禁止食品を一口も食べないためのテストではありません。

目的は、

腸の中をできるだけきれいにして、必要なところをきちんと観察できる状態にすること

です。

前日は、施設から案内された食事を意識する。

下剤は、説明された方法で進める。

便秘が強い人や、以前前処置で苦労した人は、先に相談する。

そして、うまくできなかったことがあれば、そのまま伝える。

それで十分です。

食事も大事です。

下剤も大事です。

でも一番大事なのは、

「この一回の検査で、できるだけきちんと大腸を見る」という共通の目的に向かって準備すること

だと思っています。

せっかく少し面倒な大腸カメラを受けるのですから笑。

できるだけ一度で、きれいに、しっかり見てもらいましょう。

それではまた。

※本記事は大腸内視鏡検査前の一般的な情報をまとめたものです。前処置の方法、食事制限、下剤の種類や服用方法は医療機関・薬剤・検査時間・持病などによって異なります。実際に検査を受ける際は、受診する医療機関からの指示を優先してください。

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